2014年04月29日

装備解説(各部隊の編成について)

②実際の各部隊の装備スタイルについて
ここでは空軍でのSTS/TACP/RQSの編成について説明致します。

「STS」
   これは「Special Tactics Squadron」の略で、AFSOCグループでの地上戦闘部隊を指します。軍隊の編成規模でいうと「中隊」の規模になります。世界中に展開するための14のSTSチームが配置されています。CCT・PJ・SOWTなどの部隊がこのチームの構成になり、定数はおよそ120―150名で、このうち20名程度が本部管理要員。残り120名程度が戦闘要員で、3小隊規模の編成をします。

3小隊規模のうち1小隊は空軍AFSOCが主体となる作戦のための任務。残り2小隊はSOCOM本体やJSOCでの応援要請での派遣任務となります。STSの隊長は少佐クラスで、PJやCCT経験者になります。隊長以下3人の尉官クラスの小隊長(空軍ではPLATOONの表記はないので厳密には小隊の表記ではありません)が在籍します。

「CCTでアタッチ」「PJアタッチ」という言葉がありますが、それぞれの他軍の部隊の応援と支援として派遣されます。SOCOM傘下の各特殊部隊の支援と派遣がほとんどです。この場合4人1組×派遣先部隊の総数になります。SOCOM傘下のAFSOCという構図になるので、STS所属という形になります。STSの3小隊規模のうち2小隊規模、およそ80人程度=4人1チーム×およそ20チームの編成が出来ます。派遣先部隊が小隊規模や分隊規模で有る場合、2名が現場2名が後方支援というケースが多くなります。

このSTSは特殊任務に付随するので、その装備についても派遣先の特殊部隊と同じようなスタイルになります。今回のHR2.0のレギュレーション時期に照らし合わせると「敵勢力要人の確保と暗殺(実例としてフセイン元大統領捜索逮捕やザルカウィ容疑者暗殺など)」や、「味方陣営の救助(ジェシカ・リンチ救出作戦)」、「レッドウイング作戦直後・マーカスラトレル救出作戦」などの特殊作戦で航空支援を必要とするケースがマッチングすると思います。


装備解説(各部隊の編成について)
 (画像解説)STSのCCTで2005年頃のアフガンです。
SFGへのアタッチでハンヴィーの後部からの画像ですがこの時期から車両を運用するケースが多くなります。遠距離での特殊作戦支援が激増し、また240やAT-4などの運用が多く、また航空支援など無線機の数も多くなりがちなため積載する車両が必要になります。そのためか、この時代の画像では車両と共に写るCCTの画像が多く見受けられます。

装備はBHIストライクリーコンにTACPのポーチ類。
銃はM4(14.5)に552ホロサイト・クレーンストック。
グローブはオークリーパイロットファクトリーの黒。

ヘルメットは着用していません(車内にあると思われる)が、このパターンでの画像の多くはヘルメットを被っていません。またバックパックも車内にあると思われ背負っていません。背部にあるオレンジ色の布状のものは「VS-17パネル」という上空からの識別確認のためのナイロン製のシートです。


装備解説(各部隊の編成について)


    (画像解説)STSのPJで2003年頃の画像です。じつは作戦自体は多いのですがSTSアタッチのPJの画像がほとんど無く、また公開されているのも限られているため04年、05年とほぼ装備的には変化がないので、申し訳ございませんがこちらの画像を用意します。

イラク戦争直後にJSOC(米英特殊戦編成チーム・いわゆるタスクフォース)が発足し、その傘下として24thSTSが加わります。当時アフガニスタンで展開中の24thSTSのPJチームは急遽イラクへ派遣されます。背景の機体はCH-47Mでおそらく陸軍所属の機体と思われます。
装備的には、ほぼ数年先とあまり変化はありません。装備で特徴なのが空軍の定番であるMAV(左端の隊員)以外に、LBT-0292やBHIの1961チェストを使用しています。右2人の胸にはNVGポーチが付けられています。



装備解説(各部隊の編成について)


(→画像解説)STSのPJといえば、かの有名なジェシカ・リンチ氏救出作戦のPJです。2003年4月と古い画像ですが、ほぼ翌年までは同じ装備なので参考に掲載しました。

この隊員のアーマは3CのPBPV、ヘルメットはこの当時で最新のTC-2001(もしくは2000のサイドカット)。ウィルコックスのストラップ式マウントにPVS-15です。15にはコンパスらしきものが装着されています。

左腰にBHIのガスマスクポーチ(カーキでペイントしています)。バックパックは恐らくLBT-1562のOD色と思われます。

新旧混ざった装備がこの年代の特徴かもしれません。


装備解説(各部隊の編成について)















(←画像解説)上のジェシカ救出のPJとほぼ同じ装備の隊員です。

やはりアーマはPBPV。右の隊員はEAGLEのエアレスキューのOD色。腰にはピストルベルトに上画像と同じくBHI.のガスマスクポーチ(BLACK)とSPEAR ELCSのファーストエイドキットポーチ(W.L)。

左の隊員の腰回りもSPEAR ELCSのポーチです。足元はALTAと思われるニーパッドにゲイターを装着しています(メーカー名不明)。





















「TACP」
SOCOM主導作戦以外の作戦などはAFSOCから離れた形、つまりSTSの枠から離れた形での支援になります。対テロ戦争以前の軍縮の影響で現在もSTSの定員割れの現象があり、このことから2004年前後からTACPがAFSOも含め数多くの作戦を担当するケースがはじまります。

一方で2003年には「JTAC」という組織を政府が編成します。陸海空3軍のFACやFOと共に1つの枠組みとして前線航空支援の形態を作り出しますが、当時はイラク戦争が激化し「JTAC」の編成と運用が間に合わない状況が続きました(JTAC編成後の実作戦は2004年中期以降)。CCTを増やせばいいと思いがちですが、陸軍や海兵隊が主体となる通常作戦では空軍任務である空爆以外に地上からの砲撃支援やミサイルの支援などもあり、自軍の航空機に被弾せず、航空機・砲撃・ミサイルなど、これらを総てコントロールしなければならず、少ない人数でのCCTでは対応できません。多くの人員(派遣先大隊に最低4人・実際の作戦では3~4大隊が参加)が必要とするのでTACP=タクティカル・エア・コントロール「パーティ」という表現になります。

そしてFAB(前線火力総支援)の能力を持つTACPが対応します。イラク戦争初期段階まではCCTがTACPの任務を一部付随されますが、イラク戦争直後よりSOCOM主体での作戦が激増しCCTではその対応が難しくなります。その後ファントムフューリ作戦(ファルージャ攻略)・パワースクウィーズ作戦(バスラ包囲)などは、市街地・海兵隊主体・陸軍主体・地対地砲撃などの要因で、多くのTACPの支援と応援が必要となりました。


装備解説(各部隊の編成について)
(↑画像解説)これも古い画像ですが2003年頃のイラクで米82空挺師団をサポートするTACPです。ヘルメットはTC-2000 NVGマウントはNorotos Lhinoになります。左の隊員がSPEAR ELCS、右の隊員が RACKチェストを着用しています。銃は2人ともM4の14.5インチにリューポルドのMk.4 CQ/T。 画像では不鮮明ですが、左の隊員はヘッドセットをせずにヘルメットのチンストラップにH350と思われるハンドセットを直接引っかけています。このように一般米軍とあまり変わらないスタイルが多いのがTACPの特徴です。


装備解説(各部隊の編成について)
(←画像解説)2006年頃のアフガニスタンで、同じく米82空挺師団をサポートするTACPです。

この画像でも一般陸軍兵とあまり変わらないスタイルです。

右の隊員の左肩には派遣先である82空挺師団のパッチが付いています。TACPの多くが派遣先の師団章に、空軍のインシグニア(階級章)を付けます。

リグ類では、左の隊員がHPC(もしくはFAPC)にEAGLE RRVのフラップ付。右の隊員はEAGLE FB チェストに正体不明のアーマ、チェストの全面にTAGのsmall chestポーチを付けています。またグローブはセージグリーンのパイロットグローブです。

米陸軍一般兵科の装備から、少し変則してポーチ等を変えればTACPのスタイルになることが出来ます。





「RQS」
空軍特殊系のなかで唯一独自の航空機運用ができ、ヘリと共に任務を遂行するなど一番空軍らしい任務かもしれません。全軍・全部隊はもとより、友好国軍や民間人までもの救難救助支援もします。また任務性で装備も斬新なスタイルを醸し出し、一番人気の高い部隊かもしれません。

じつはほとんどのRQS隊員がSTSに属しています。STSでの任務において救助任務またはその恐れがある場合はSTS選任のPJに加え、RQSの選任のPJが加わります。至極簡単にいえば「STSを編成する上でRQSのPJが主体となり、その任務を遂行する」といっても過言ではありません。近年のハイチ地震支援での22ndSTS、東日本大大震災支援での320thSTSはそれぞれ307thRQS、33rdRQSのPJが主体となります。

映画ローンサバイバーにおいて「レッドウイング作戦」直後のマーカス・ラトレル救出作戦においては、急遽75thレンジャーやDEVGRUが緊急出動しています。そこでSTSとして24thSTSのPJやCCTがDEVGRUにアタッチすることになるのですが、306thRQSと305thRQSのメンバー双方が24thSTSの構成をしています(当時24thSTSはイラク・アフガニスタン両戦争でのJSOC配下部隊であり任務の多さにより常時定数割れを起こしていました)。補足ですが空軍特殊の実画像で多いのがRQSの訓練画像ですが、その後、戦地に派遣され実任務になるとSTS専属になり、STSでの任務が終わるとRQSの任務へとローテーションします。


装備解説(各部隊の編成について)


       (↑画像解説)306thRQSのPJです。この部隊は“イエーガーマイスター”のシンボルパッチで有名です。

この部隊では装備の統一感が無く、いわば独特な雰囲気を醸し出しています。リグは左の隊員がPACAにMAV 1P、なんと右の隊員はTLBVを着ています。BDUは左の隊員が3C-DCUの上着に民製品のパンツ。右の隊員がUCP-ACUです。

新旧・そして民製品を交ぜた装備を使うPJは数多くいます。彼らのように「使いやすい・動きやすい」などの理由から様々な装備を選ぶ傾向もあり、必ずしも定番な装備があるわけではありません。これから空軍特殊(特にPJ)を始めるビギナーとしては、じつは結構ハードルが低いケースもあるのです。

ヘッドセットはリベレーター1とSORDIN。銃はM4RISの14.5インチでVITALとPEQ-2を装着しています。ニーパッドはアークテリクス。




装備解説(各部隊の編成について)
(←画像解説)2005年頃のRQSのPJです。

この隊員たちはレッドウイング作戦直後のマーカス・ラトレル氏救出に関わったPJです。

じつは2人とも医師免許を持つPJです。空軍では彼らのようにPJでありながらドクターであるという隊員が数多く在籍しています。

リグは左の隊員がHPCにEAGLE Hハーネス。      右の隊員は珍しくブラックカラーのBHIストライクリーコンをペイントしています。

右の隊員のヘッドセットはリベレーター1。2人ともこの時期から使用され始めた1Pointバンジースリングを付けています。







(補足・各兵科の参考画像)
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Posted by 八幡平駐在員(略して八駐) at 02:30│Comments(0)2014/2.0(2nd)
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